宇宙
四足ロボットが自律的な火星探査に備える

ある日、宇宙探査は、月へのアルテミス計画やイーロン・マスクが提案する火星への計画のように、宇宙飛行士が恒久的にオフワールドで生活することを利用するかもしれません。
それでも、人間が存在しても、宇宙で必要とされる作業の多くはロボットが行うことになるでしょう。ロボットは人間の宇宙飛行士に比べて交換が容易で、毒性のある空気や真空、放射線、過酷な温度などに対してはるかに耐性があるからです。
理想的には、ほとんどのローバーやロボットは単純なタスクを自律的に処理できるべきであり、地球上または現場の人間は特定の問題を解決したり、日々のミッションを決定したりする際にだけ関与すればよいでしょう。
AI が急速に進化する中、物理的 AI、現在は AI リーダー NVIDIA が推進する概念も含めて、このサイエンスフィクション的なビジョンはすでに現実になる可能性があります。
さらに遠いミッション、たとえば木星の衛星への探査では、通信の遅延が最大で 1 時間にもなるため、直接操作はさらに困難になり、探査機が自律的に判断できることが極めて価値あるものとなります。
「ローバーはエネルギー効率と安全性を重視して設計され、危険な地形をゆっくりと移動します。その結果、探査は通常、着陸地点のごく一部に限定され、ローバーは 1 日に数百メートル程度しか走行できないため、地質的に多様なデータを収集することが難しくなります。」
もう一つのステップは、宇宙探査ロボットにより自由に移動できる能力を与えることです。車輪やトラックは信頼性が高いかもしれませんが、月や火星に道路が待っているわけではありません。
その結果、これまでのロボット探査ミッションは比較的平坦で移動しやすい領域に焦点を当ててきました。しかし、これらのエリアは将来の宇宙コロニー化にとって最も有用とは限りません。
例えば、溶岩チューブは将来の宇宙飛行士にとって完璧な事前構築シェルターになる可能性がありますが、まだ十分に探査されたことはありません。AI 主導の溶岩チューブ探査が計画されている。また、資源は深いクレーター(水)や山岳地域(金属やその他の鉱物)に多く存在すると考えられます。
「月では、多くの重要資源がアクセスが困難な地形に位置しています。揮発性やチタンが豊富な噴火堆積物、REE(希土類元素)を含む KREEP 玄武岩、そして南極付近の永続的に影ができる領域にある氷などです。火星でも、水氷の露出や金属が豊富なレゴリスが高緯度や高地の不安定な斜面や割れた地質環境に見られます。」
したがって、より高度なロボットが必要であり、四足歩行の「ロボドッグ」は有力な選択肢です。この設計は地球上でもますます人気が高まっています。
この可能性は、スイスの研究者たち(ETH チューリッヒ、チューリッヒ大学、ヌーシャテル宇宙探査研究所、バーゼル大学、ベルン大学)によってテストされています。
彼らは四足歩行ロボットを使用し、再構築された宇宙環境で半自律的な探査とサンプル収集が可能かどうかをテストし、Frontiers In Space Technologies1 に「ラマン装備ロボットアームと顕微鏡イメージャを使用した四足ロボットによる火星・月類似体の半自律探査」というタイトルで報告しました。
地球上で火星を再現する
研究者はマーズラボ施設をバーゼル大学で使用しました。この施設は類似岩石、レゴリス(惑星の塵)、類似照明条件を用いて、重力を除けば火星と同一の環境を再現します。
マーズラボは 80 m2 の部屋を含み、40 m2 のテストベッドが火星類似材料で構成されています。ここには石膏や炭酸塩岩など、生体シグネチャ保存の可能性が高い岩石が含まれ、赤い惑星で過去の生物活動を調査する実際の火星探査にとって重要な対象となります。
さらに、過去の流水を示すシリカ系炭酸塩岩や硫黄を含む玄武岩などの岩石も含まれました。
部屋の一部は月面条件も再現しており、酸化物、チタン、アルミニウム、シリコンの有用な供給源となり得る岩石が配置されています。
四足探査ロボット
多用途ロボットとセンサー
本研究で使用されたロボットは、スイス企業ANYboticsが製造した ANYmal で、危険領域での産業検査を専門としています。マッピングとローカリゼーションを可能にするため、ANYmal は Velodyne 製 VLP-16 Puck LITE LiDAR、Intel 製 RealSense D435 アクティブステレオセンサー 6 台(標高マッピング用)、および FLIR Blackfly 広角カメラ 2 台を装備し、RGB 画像ストリームを提供します。
ロボットは顕微鏡イメージャ(MICRO)と、スイス企業 Metrohm が製造したMIRA RTX ラマン分光計を装備しています。これらのセンサーは ETH(スイス連邦工科大学)が社内で開発したロボットアームに取り付けられました。
オペレーターは、デジタル標高マップとカメラ画像を表示するグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を使用して遠隔操作し、コマンドやタスクを送信します。
MICRO イメージャの目的は、岩石サンプルのテクスチャ、粒子、色のクローズアップ画像を取得することです。これは岩石の種類と組成を特定するために重要なデータセットです。USB 顕微鏡、48 個の RGB LED リング、ToF(飛行時間)センサー、制御エレクトロニクスを組み込んでいます。ターゲットに接触している間、泡製リングが不要な光の侵入を防止します。
ラマン分光計は 785 nm の波長を持つ赤外線励起レーザー(最大出力 100 mW)を搭載し、400〜2,300 cm⁻¹ の範囲を 8〜10 cm⁻¹ の分解能で測定します。このデータは MICRO の観測を補完し、研究対象岩石の化学組成を明らかにします。
人間あり・なしでの調査
ロボットによる科学的測量の運用コンセプトは 2 つあります:従来の人間制御方式と、最小限の人間介入で複数ターゲットを半自律的にサンプリングする方式です。
人間支援方式では、オペレーターがカメラ画像でターゲットを特定し、GUI 上でナビゲーションウェイポイントを選択します。その後、オペレーターは受信データを即座にレビューし、追加測定が必要か判断します。また、ラマン測定の回数と具体的な測定位置もオペレーターが決定します。
半自律方式では、事前にロボットへ移動、ウェイポイントナビゲーション、機器展開、データ返送などのコマンドを与えておきます。指示がアップロードされると、ロボットは移動からロボットアームの展開、科学測定まで全タスクを自律的に実行します。
各ターゲットで測定シーケンスを完了した後、ロボットは自律的に次のターゲットへ移動し、測定ごとにデータを保存します。すべてのターゲットの測定が完了した時点で、初めてロボットは収集したデータを基地局へ送信します。
分析結果は、ラマンと MICRO の組み合わせが岩石の正確な同定率を高めることを確認しました。
半自律方式はサイクルごとに少なくとも 1/3 のターゲットを正しく識別し、4 つの類似ミッションのうち 1 つでは 100% のターゲット同定に成功しました。マルチターゲットミッションは 12〜23 分で完了したのに対し、人間が指導するミッションは同等の分析を行うのに 41 分要しました。
結果は完璧ではありませんが、1 分あたりの分析成功率が大幅に向上し、全体的な効率が高まりました。この経験は、より自律的なロボットが惑星表面の広範囲を迅速に調査できることを裏付けました。
さらに、興味深いサンプルが特定された場合、科学者が手作業でさらに詳細に分析することが可能です。
「大型で複雑な機器スイートにのみ依存するのではなく、将来のミッションでは環境を迅速にスキャンし、有望なターゲットを詳細調査のためにフラグ付けできる機敏なロボットを展開できるでしょう。」
ロボット探査の改善
研究者は、展開されたツールがすべて直接的人間操作を前提に開発されたことにも言及しました。そのため、半自律ロボットは時折、アームの位置がターゲット外れとなり、MICRO 画像がぼやけたりラマンデータがノイズ過多になることがありました。
改良されたシステムでは、画像がぼやけたり分光データが不良だった場合に自動的にアーム位置を微調整するテストを再実施できるでしょう。さらなる自動化プログラムも有用です。
「さらに高いレベルの自律性へ移行するために、ロボットは形状、色、テクスチャに基づいて興味対象を自律的に検出できるようになるべきです。データ伝送が極めて遅い(例:外側太陽系)シナリオでは、ロボットは自律的にこれらのターゲットの測定を行うことができます。」
このシステムは最近の AI の進歩も活用していませんが、将来的にロボットの自律性を大幅に向上させる可能性があります。前述の「Space 2.0:自律ロボットと AI の台頭」でも議論したように、検出からスキャンまでの高度なプロトコルがより効率的で自律的な測定を実現します。さらに、火星や月でロボットが取得した実データで専門的な AI モデルを訓練すれば、将来の探査機はさらに効率的になるでしょう。
宇宙ロボティクスへの投資
Intuitive Machines
(LUNR )
自律探査機を星間天体に送るには、大型探査機の構築と無事に目的地に到達させる高度な専門知識が必要です。これまでは主に NASA、ESA、関連大学といった公的機関が担ってきました。
しかし、民間企業が近地小惑星などの採掘ミッションを自動化または有人で実施できる時期が近づいており、これは今後数年で計画されている月への有人ミッションと並行、または次のステップとして進む可能性があります。
2013 年にテキサス州ヒューストンで設立された Intuitive Machines は、現在は「月志向」企業であり、株式ティッカー LUNR が示す通り、すでに4 つの NASA 月ミッションに選定され、従業員は 400 人以上です。
同社は民間企業としては初めて月面に着陸し、科学データを送信した企業です。また、宇宙で LOx/LCH4(液体酸素・液体メタン)エンジンを初めて点火した実績もあります。現在、月面探査と居住の基盤となる多数のプロジェクトに取り組んでいます。
最初のプロジェクトは「データ伝送サービス」で、技術はテスト中で、最終的には月の軌道周回にデータ伝送コンステレーションを構築することを目指しています。
第 2 の事業は「Infrastructure as a Service」です。これには通信サービス、GPS 位置情報サービス、そして自律運用可能な Lunar Surface Vehicles(LTV)が含まれます。
最後のセグメントは月面への資材輸送です。これまでに同社はNova-C ランダーを使用して科学ペイロードを届けており、4.3 メートル(14 フィート)高さで 130 kg のペイロードを月に運搬できます。
次のステップは Nova-D ランダーで、1,500〜2,500 kg の資材を月に運搬できるようになります。このペイロード容量とサイズは、Lunar Terrain Vehicle(LTV)や、月面基地に電力を供給することが期待される 40 kW の核分裂表面電源原子炉の輸送に必要です。
同社は NASA との多数の有価値契約を獲得しており、例えば Near Space Network 契約は最大 48.2 億ドルの価値があります。LTV 契約の最終決定は 2025 年末に 3 社の候補から選ばれる見込みで、こちらも最大 46 億ドル規模です。
NASA 以外でも、2025 年 4 月にテキサス宇宙委員会から最大 1,000 万ドルの助成金を受け、顧客基盤の多様化を図っています。
この資金は、地球再突入機と軌道上製造ラボの開発を支援し、微小重力下でのバイオ製造を可能にします。この再突入機はバックアップオプションとしても機能し、将来の月サンプルリターンミッションのリスクを低減します。
別のプロジェクトとして、空軍研究所 JETSON 契約向けの低出力核ステルス衛星の開発があります。
同社は 2025 年第1四半期にプラスのフリーキャッシュフローを達成し、月面通信契約も取得したことで、投資家にとってはキャッシュバーン型スタートアップから、成長する宇宙経済にサービスを提供する確立した事業者へと安全性が大幅に向上しました。
さらに、NASA の信頼できるパートナーとして SpaceX(xAI との合併後に間もなく IPO)や Rocket Lab (RKLB ) と同等の立場になることで、深宇宙探査や宇宙資源利用の基盤を築く可能性があります。
(You can read more about Intuitive Machines in our investment report dedicated to the company.)
最新 Intuitive Machines (LUNR) 株式ニュースと開発
参照された研究
1. Gabriela Ligeza, Philip Arm, et al. Semi-autonomous exploration of martian and lunar analogues with a legged robot using a Raman-equipped robotic arm and microscopic imager. Frontier Space Technologies, 31 2026年3月. Volume 7 – 2026 | https://doi.org/10.3389/frspt.2026.1741757




















