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地熱プールを活用してリチウム需要に応える

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ますます増えるリチウムの探索

電気自動車(EV)の普及に伴い、リチウムイオン電池とその原料であるリチウムの需要が増えています。今後の需要はEVの普及速度、電池の化学組成、リサイクルなどによって変わります。

ソース: Statista

リチウムは抽出が困難であるため、これが問題を引き起こしています。過去には価格の激しい変動が起こり、バッテリーやEVメーカーの原材料コストが大きく変動しました。

ソース: Carbon Credit

現在、リチウムは主に硬岩や塩水の塩湖から生産されており、いずれも大量のエネルギーまたは水を消費します。

代替資源として、地熱流体などの地下かん水に溶けたリチウムが注目されています。ただし、含まれる他のイオンから効率よく分離する技術が課題です。

ライス大学の研究者らは、この課題に取り組んだ成果をPNAS(米国科学アカデミー紀要)に「かん水からリチウムを選択的に抽出する3室型電気化学反応器1」と題して発表しました。

リチウムはどこから来るのか?

リチウムは地殻に比較的広く存在しますが、経済的に採掘・回収できる濃度で集積した資源は限られます。

中国は電池製造とリチウム精製で大きな役割を担っています。一方、鉱山生産ではオーストラリア、チリ、中国、アルゼンチンなどが重要です。チリ・アルゼンチン・ボリビアの「リチウム・トライアングル」は資源量で注目されますが、資源量と実際の生産量は同じではありません。

 

他国でも地下かん水が注目されています。2024年のUSGS研究は、アーカンソー州南西部のスマックオーバー層に大量のリチウムが溶存すると推定しました。ただし、これは地下に存在する資源量の評価であり、技術的・経済的に回収できる埋蔵量の確定ではありません。

これらの塩水はしばしば比較的高濃度のリチウムを含んでいます。しかし、他の鉱物も複雑に混在しているため、リチウムをどのように抽出するかが課題です。

直接リチウム抽出(DLE)は、かん水からリチウムを選択的に回収する方法の総称です。長期間の蒸発池利用を減らす可能性がありますが、適性は濃度だけでなく、共存イオン、温度、水処理条件などにも左右されます。

ソース: Euronews

直接リチウム抽出

DLEは溶液中のリチウムイオンを選択的に取り出すことを目指します。代表的な方式には いくつかの種類があります。

  • 吸着型DLE:選択性を持つ材料にリチウムを取り込ませる方式。
  • イオン交換型DLE:材料内の交換可能な陽イオンと、溶液中のリチウムイオンを交換する方式。
  • 溶媒抽出型DLE:抽出剤を含む液相にリチウムを移し、かん水から分離する方式。

 

ソース: Lithium Harvest

電気化学的リチウム抽出

別の方法が電気化学的リチウム抽出です。電位差と選択的な膜などを利用してイオンを移動・分離します。単に強い電流を流せば選別できるわけではありません。

前述の通り、これらの塩水にはマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムなど、イオンサイズや電荷が類似した多くの鉱物が含まれています。そのため、イオン特性のみを利用した方法ではリチウムだけを完全に選択するのが困難で、何度も繰り返す必要があります。

代替案として電流を使用することが考えられますが、塩水には塩化物イオンが多く含まれており、従来の電気化学プロセスでリチウムを分離すると、極めて有毒な塩素ガスが発生する恐れがあります。

塩素はハロゲン元素の一種であり、有毒な塩素ガスは第一次世界大戦でも化学兵器として使われました。ハロゲンは塩素だけの別名ではありません。電気化学的抽出では、塩素発生などの副反応を抑えることが安全性と効率の重要な課題です。

バッテリー技術を利用したリチウム抽出

ライス大学の研究は、リチウムイオン伝導性ガラスセラミック(LICGC)膜を使います。この固体電解質膜はリチウムイオンを通しやすく、共存する他のイオンを遮る性質があります。電池向け固体電解質の知見を分離技術に生かすものですが、LICGCがそれまで一度もリチウム分離に使われていなかったという意味ではありません。

3室電気化学リアクター

従来の電気化学反応器は、しばしば2室構成を採用します。研究チームは中間室を設け、LICGC膜と陰イオン交換膜を組み合わせた3室構成を開発しました。これにより、原料かん水側の塩化物イオンを陽極から隔てながら、水酸化リチウムを生成します。

「我々の分野は長らくリチウム抽出の非効率性と環境影響に苦しんできました。このリアクターは、基礎科学と工学的創意工夫を組み合わせて実世界の課題を解決する力の証です。」
Haotian Wang氏、ライス大学化学・生体分子工学准教授。

模擬かん水での試験では、リチウムイオンの輸率97.5%を達成し、測定条件下でナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの濃度は検出限界未満でした。この輸率を、そのまま製品の重量純度と同一視することはできません。

塩素発生反応のファラデー効率は6.4%に抑えられました。これは電荷のうちその反応に使われた割合であり、装置の総消費電力の6.4%という意味ではありません。

 それでも、いくつかの課題は解決が必要です

試験では、LICGC膜表面へのナトリウム蓄積も確認されました。研究室での良好な分離性能に加え、長期運転時の膜の安定性を検証する必要があります。

商業規模に拡大するには、こうした蓄積の管理に加え、実際のかん水への対応、膜の寿命、処理量、コストなどの課題が残ります。

この問題を解決する可能性として、塩水を前処理してナトリウム含有量を減らす方法が検討されています。

別の方法として、ナトリウムイオンが膜に付着しないようにする特殊なコーティングを見つけることが考えられます。

リチウムとバッテリー技術への投資

リチウムイオン電池は、携帯電子機器やEVの普及を支えてきました。今後も他の電池技術とともに、再生可能エネルギーの蓄電や一部の航空用途などで役割を広げる可能性があります。

電池関連企業への投資を扱う証券会社については、securities.ioの以下の地域別記事をご覧ください。 米国, カナダ, オーストラリア, 英国, その他の国。

個別企業以外の選択肢として、リチウム・電池関連ETFもあります。例えば、 Amplify Lithium & Battery Technology ETF (BATT)、Global Xの Lithium & Battery Tech ETF (LIT)、または WisdomTree Battery Solutions UCITS ETF (WT ) などです。組入銘柄や費用はそれぞれ異なり、分散投資でも業界全体のリスクは残ります。なお、上のWT表示は運用会社WisdomTreeの株式であり、このETF自体のティッカーではありません。

関連企業については「電池金属・再生可能エネルギー関連の鉱業株10選」をご覧ください。

直接リチウム抽出企業

Rio Tinto

RIO 価格チャート

Rio Tinto (RIO ) は、鉄鉱石、銅、アルミニウムなどを手掛ける大手資源企業です。

Rio Tinto は急速に拡大しており、特にギニアのシマンドゥ大規模鉄鉱山プロジェクトやモンゴル史上最大規模の銅鉱山オユ・トルゴイプロジェクトが挙げられます。

同社は銅生産の拡大を進めています。将来の供給への寄与は、各プロジェクトの進捗や世界全体の生産動向に左右されます。

2024年10月、Rio TintoはArcadium Lithiumの買収契約を発表しました。買収完了は2025年3月6日です。ArcadiumはAllkemとLiventの統合により2024年1月に誕生しました。

ソース: Arcadium

統合により、Arcadiumはリチウムの採掘・抽出から加工までを手掛ける企業となりました。2024年の買収発表時点では、2028年末までに生産能力を2倍超にする計画が示されていました。

Arcadiumの技術開発

DLE

この買収で「Rio Tintoの真の狙い」と評されたものの一つが、Arcadiumの直接リチウム抽出(DLE)技術です。 Arcadiumの前身事業は、1996年から蒸発池と組み合わせたDLEを商業利用してきました。DLEの方式によっては、蒸発池への依存をさらに減らせる可能性があります。

また、 Liventは2023年にILiAD Technologies関連会社の少数持分を取得しました。

「ILiADの技術プラットフォームは、リチウムに高い選択性を持つ吸着材と連続向流の移動床処理を組み合わせています」
「Livent は世界で最も先進的かつ最大規模の DLE ベース生産プロセスの実践者であり、ILiAD が DLE の未来にもたらす利点を認めてくれたことを大変嬉しく思います」

DLEの経験やILiADの技術は、Arcadiumの技術資産を評価する要素です。ただし、買収の理由を一つの技術だけに帰することはできません。リチウム市場の循環、資源基盤、事業規模なども関係します。

電気化学的抽出と吸着型DLEは、それぞれ異なる長所と課題を持ちます。将来、一方が必ず他方を置き換えるとは限りません。

印刷可能なリチウム材料

Arcadiumは、印刷可能なリチウム配合材料LIOVIXも開発しました。電極のプレリチウム化や薄いリチウム電極の製造などに使う技術であり、単に既製のリチウム箔を指す名称ではありません。材料の使用量や工程効率、電池性能の改善を目指します。

ソース: Arcadium

Rio Tinto のグリーンプロファイル

Rio TintoはArcadium買収計画に加え、銅抽出技術を開発する事業である Nuton にも取り組んでいます。Nutonは、これまで処理が難しかった鉱石などからの銅回収率向上を目指す技術です。

Rio Tintoのアルミニウム事業では、水力発電を利用した製錬が低炭素化に寄与しています。ただし、ボーキサイトからアルミナを精製する工程と、アルミナからアルミニウムを電解製錬する工程は異なり、事業全体が無排出になるわけではありません。

同社はリチウム事業にも投資しており、アルゼンチンのリンコン・プロジェクトと、議論を呼んでいるセルビアのジャダル・リチウム事業(欧州最大のリチウム事業となる可能性がある)などを展開してきました。ジャダルは環境や地域社会への影響を巡って議論のある開発案件で、稼働済み鉱山ではありません。

これらの事業は、鉄鉱石を主力とするRio Tintoの事業構成を広げます。銅、アルミニウム、リチウムはエネルギー転換に関わる材料ですが、個別事業の成長と環境面の評価は、実際の操業、地域社会への影響、費用、市場動向によって判断する必要があります。

研究参照:

1. Feng, Y., Park, Y., Hao, S., Fang, Z., Terlier, T., Zhang, X., Qiu, C., Zhang, S., Chen, F., Zhu, P., Nguyen, Q., Wang, H., & Biswal, S. L. (2024). Three-chamber electrochemical reactor for selective lithium extraction from brine. Proceedings of the National Academy of Sciences, 121(47), e2410033121. https://doi.org/10.1073/pnas.2410033121

ジョナサンは元生化学研究者で、遺伝子解析と臨床試験に従事していました。現在は株式アナリスト兼ファイナンスライターとして、イノベーション、市場サイクル、地政学に焦点を当て、彼の出版物『The Eurasian Century』で執筆しています。