エネルギー
圧電材料:身近に使われている、あまり知られていない技術

新たな実用化に向けた開発が続いています。MarketsandMarketsの2022年の報告では、圧電デバイス市場について、予測されているのは2022年の約308億ドルから2027年の410億ドルへの拡大で、年平均成長率は5.9%でした。これは予測であり、2023年から3年間の確定した成果ではありません。需要の増加は、非晶質高分子や薄膜の研究を後押しする可能性があります。
圧電材料とは何か?
圧電材料は、機械的エネルギーの一部を電気的な応答に変換できます。キュリー兄弟が1880年に発見した直接圧電効果は、現在、さまざまな技術に利用されています。
適切な材料に機械的応力を加えると電気分極が変化し、表面に電荷が現れます。この効果は、中心対称性を持たない構造や配向した極性秩序に関係します。対称な物質なら何でも、圧縮するだけで圧電性を持つわけではありません。

PVDFのβ相。
一部の強誘電性圧電材料には電気分極のドメインがあります。磁気的なワイスドメインとは異なります。石英は強誘電体ではなく、こうしたドメインがなくても圧電性を示します。電気分極と磁気的な配向は別の性質です。
逆圧電効果では、電界によって材料が変形します。直接効果はセンサーやエネルギー回収に、逆効果はアクチュエーターや超音波の発生に利用されます。用途は広がりますが、何もないところからエネルギーが生まれるわけではありません。
メーカーと開発企業
応用例の前に、記事で取り上げた電子機器企業3社を紹介します。以下の財務数値は企業全体のものであり、圧電製品だけの売上を示すものではありません。
元の記事はBarron’sに掲載されたアナリスト評価のoverweightやbuyに言及していました。保有比率の引き上げや買いを勧める当時の評価であり、現在の評価や利益の保証ではありません。
Stoneridge (SRI)
2023年初めの元記事の比較では、Stoneridge(NYSE: SRI)の株価は過去1年間で30%超上昇していました。感染症流行期の落ち込みの後、売上高は2020年の6億4,800万ドルから2021年の7億7,050万ドルへ、約18.9%増加しました。
2021年末の従業員は約5,000人で、本社はミシガン州ノバイにありました。
Methode Electronics (MEI)
NYSE上場のMethode Electronics Inc. (MEI )の株価は、記事の当時の1年間の比較で約15%上昇していました。記事は、それ以前の4年間の年間売上成長率を2.36~10.13%としています。2022会計年度の売上高は11億6,360万ドルで、2021年度は10億8,800万ドルでした。
記事は当時の従業員数を7,000人超、本社所在地をイリノイ州と記載していました。
Kimball Electronics Inc. (KE)
Nasdaq上場のKimball Electronics Inc. (KE )の株価は、当時の比較で32%超上昇していました。売上高は2020会計年度の約12億ドルから、2021年度の12億9,200万ドル、2022年度の13億5,000万ドルへ増加しました。2022年度の増収率は約4.47%です。増収は同じ割合の増益を意味しません。
記事は当時の従業員数を7,000人超、本社所在地をインディアナ州と記載していました。
最新の進歩
石英はよく知られた天然の圧電材料です。用途に応じて人工のセラミックスも開発されました。1950年代に開発されたPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)は大きな応答を示します。ただし、変形量の制限、脆さ、高い密度、鉛の含有などが用途によって課題になります。
PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は半結晶性高分子です。河合平司が強い圧電応答を発表したのは1964年ではなく1969年でした。応答は極性相、配向、分極処理に依存します。一部の係数が石英を上回る場合はありますが、すべての指標や条件に当てはまりません。セラミックスより柔軟ですが、熱や経時変化で分極が弱まることがあります。PZTとPVDFの研究は続いており、すべての可能性が尽きたわけではありません。
2000年代にはGAIKER-IK4が、より高温での使用に向けて、ポリイミドなどの非晶質極性高分子を研究しました。非晶質材料には結晶のような長距離の周期的秩序がありません。ただし、非晶質であるだけで耐熱性が保証されるわけではなく、化学構造や分極の安定性も重要です。
軽量で柔軟かつ丈夫な材料の開発は、電子機器や航空宇宙分野で役立ちます。ただし、ここにリンクされたScience論文は非晶質高分子ではなく、酸素空孔の再配列によって中心対称な酸化物に大きな圧電応答を誘起する研究です。元の記事の約150°Cで機能を失い、約400°Cで劣化するという数値は、すべての高分子に共通する限界ではありません。個別の材料と試験条件に照らして評価する必要があります。
ほかの研究対象にはPVDF、共重合体、複合材料があります。非晶質ポリイミドは別の材料群です。すべての新しい高分子がPVDFと「PVT」を基礎に作られるわけではありません。有用な特性を組み合わせ、欠点を減らすことが目標です。
非晶質高分子では、ガラス転移温度、分子の動きやすさ、分極の安定性が重要です。短距離秩序は局所的な空間構造を意味します。ポリイミドは機械的、誘電的、熱的な特性から研究されています。分極処理には適切な電界、温度、時間が必要で、ポリイミドを加えるだけで全分子の配向が保証されるわけではありません。
使用例
確立した用途にはライター、水晶時計、エンジン制御用センサーなどがあります。センサーは直接効果を、アクチュエーターは逆効果を利用します。高分子は軽さや柔軟性を、セラミックスは大きな応答を提供できる場合があります。材料開発で用途は広がりますが、あらゆる用途に最適な単一材料はありません。以下には、実用化済みの用途と研究段階の構想の両方を含めています。
モバイル機器とウェアラブル機器
音や動きからエネルギーを回収する研究が進められています。ただし、普通の会話に含まれる音響エネルギーは非常に小さく、話すだけで携帯電話を動かす実用的な方法が示されたわけではありません。消費電力が極めて小さいセンサーやウェアラブル機器で、電池を補助する方が現実的な対象です。
圧電素子は数十年にわたり、マイクで音圧を録音用の電気信号に変換するために使われてきました。信号を生み出すことと、電話を充電できる電力を供給することは異なります。逆効果は音の発生にも使えます。
振動と騒音の抑制
圧電材料は振動の減衰にも使われます。例えばHEADは、テニスラケットやスキーにこうした技術を取り入れています。設計によって、振動から生じた電気エネルギーを回路で消費したり、アクチュエーターを制御して動きに対抗したりできます。別種の「逆材料」が必要なわけではありません。
車両、建物、産業機器では能動的な騒音・振動制御が研究されています。ビットコイン採掘施設は、周辺住民がファンや機械の騒音について苦情を訴えた事例として挙げられます。これは、すべての採掘施設に圧電アクチュエーターが導入されている証拠ではありません。受動的な制振材は機械的エネルギーを熱に変えます。どれも共振周波数を下げるだけで働くわけではなく、必ず重く高価というわけでもありません。圧電特性の活用により、能動的・半能動的な方法が可能になります。効果は設計や対象の周波数域に依存します。
洗浄への応用
開発中の洗浄技術の一例が、Solar PiezoCleanの透明な圧電膜です。太陽光パネルのほこりを落とし、水や保守作業を減らすことを目指しています。2023年に広く商用利用されていたことを示すものではありません。
交番電界で膜を振動させると、ほこりが剥がれ、重力の助けで落ちる可能性があります。水と作業を節約し、パネルの発電能力を維持することが狙いです。効き目はほこりの種類、付着の程度、使用条件によって異なり、すべての汚れが自動的に落ちるわけではありません。
より確立した用途には、宝飾品などを洗う超音波洗浄器があります。
航空宇宙
航空機では、圧電センサーの電気信号から構造の状態や機械的応力を監視できます。安全性、必要な箇所の補強、不要な重量の削減に役立つ可能性があります。
宇宙分野では、圧電アクチュエーターが精密な微小動作を制御します。例えば、衛星の微調整に使うマイクロスラスターへの推進剤流量を調節する微小バルブを駆動できます。圧電材料そのものが反作用なしの推進力を生むわけではありません。
医療機器
血管内超音波(IVUS)は、カテーテルに取り付けた小さな超音波振動子で、冠動脈や末梢動脈などの内側と血管壁を撮像します。設計に応じて圧電セラミックスや単結晶が超音波を送受信します。すべての装置が単結晶だけを必要とするわけではありません。
歯科用の圧電式超音波器具は、電気的に発生させた振動で歯石などの付着物を除去します。太陽光パネルの洗浄とは異なる用途ですが、どちらも電気と機械的運動の変換を利用します。
ソナー
ソナーは水中の撮像や通信に使われます。海底地形の測量や魚の位置の検出が例です。圧電振動子は音波を送信し、反射波や通信信号を受信できます。
ソナーには100年以上の歴史があります。関連用途として、駐車や運転支援の短距離超音波センサーがあります。車両によってカメラ、レーダー、ライダーと組み合わせますが、すべての自動運転車が同じセンサー構成を採用するわけではありません。
機械的エネルギーの回収
工場、運動場、駅など人の多い場所で、足踏みや振動からエネルギーを回収する研究が行われています。元の記事は体積1 cm3の石英試料に175ポンド重、約780ニュートンの力を加えた場合、最大4,500 Vになるという例を挙げていました。普遍的な発電量の保証ではありません。電圧は形状、向き、負荷、回路に依存します。ボルトはエネルギーや電力の単位ではありません。開放電圧が高くても電荷量が小さい場合があり、建物の電力需要の大部分を賄えるとは結論できません。
道路に埋め込んで照明やセンサーなどの小さな負荷に使う構想もあります。エネルギー源は動きと変形であり、抵抗が増えれば車両の消費エネルギーが増える可能性があります。無料のエネルギーではありません。
Electreonのワイヤレス車両充電は、外部電源と誘導によるエネルギー伝送を使います。道路への圧力から無料で電気を得る方式ではありません。一方、Pavegenの床は圧電材料ではなく電磁式発電機を使用し、同社は1歩当たり約2~4ジュールと説明しています。小さな負荷や参加型の展示などに適しており、電気自動車の主な充電エネルギーを代替できる証拠ではありません。適切な路線では走行中のワイヤレス充電で電池を小さくできる可能性がありますが、別の技術です。
まとめ
圧電材料はセンサー、アクチュエーター、超音波、制振で確立した用途を持ち、新たな組成で可能性が広がります。光起電力効果は1839年に発見され、実用化は数十年にわたり進んできました。今になって初めて役立つようになったわけではありません。同様に、圧電材料の研究も性能と耐久性を改善します。エネルギー回収では、電気は利用可能な機械的エネルギーから得られます。ここで取り上げたのは広い分野の一部であり、実用化の段階や規模はさまざまです。












