積層造形

低コストの3Dプリントロボットは電子部品なしで動作

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UC San Diegoの研究チームは、電子部品を使わずに歩く柔らかいロボットを、デスクトップ型3Dプリンターで一体造形した。造形後の組み立ては不要だが、歩行には圧縮空気またはガスの供給が必要である。以下では、この3Dプリントロボットの仕組みと研究の限界を見ていく。

ロボットはどのように作られるのか? 現代のロボット製造技術を探る

一般的なロボットは本体、電子回路、電池、制御装置などを別々に作り、組み立てる。部品点数や配線が増えるほど、製造や保守は複雑になりやすい。
産業用ロボットなら駆動モーター、センサー、制御基板を別の工程で調達することも多い。部品の取り付けと配線には時間がかかり、一体造形への関心につながっている。ただし、従来型には精密制御や高い出力など別の利点がある。

ソフトロボットとは何か? 利点と実世界での活用例

ソフトロボット

流体回路を用いた3Dプリントソフトロボットの進展

ソフトロボットでは、空気圧で変形する柔らかい部品や流体回路の研究が進んでいる。3Dプリントを使えば、形状の複雑な部品を繰り返し製作しやすくなる。今回の研究チームは、以前にも流体回路を組み込んだグリッパーなどを製作している。
論文では、材料の非線形な変形を利用した空気圧回路が、駆動だけでなく簡単な制御も担うと説明する。研究者らは従来、電子部品を使わずに物をつかむ装置や這う装置を研究していた。今回の課題は、脚を交互に動かして障害物を越える歩行を実現することだった。

3Dプリントと組み立てにおけるソフトロボットの課題

従来のシリコーン成形には型作りや手作業での組み立てが必要な場合がある。また、多くのソフトロボットはポンプ、弁、電子制御装置を外部に接続しなければ動かない。空気圧回路まで一体造形できれば、組み立て工程を減らせる可能性がある。
空気圧チューブを外部装置につないだままでは、狭い場所への移動や持ち運びが制約される。一方、空気を通す閉じた流路を3Dプリントするには、印刷時の支持材を取り除き、漏れのない弁を作る必要がある。従来の複数材料方式では、材料特性や装置費用にも課題があった。

研究出典:Zhaiら、Advanced Intelligent Systems(2025年)。UC San Diegoの発表による試作材料費は約20ドル。歩行には圧縮空気またはガスが必要である。

新しい研究が完全に3Dプリントされた、電子部品なしの歩行ロボットを公開

学術誌Advanced Intelligent Systemsに掲載された「Monolithic Desktop Digital Fabrication of Autonomous Walking Robots」1は、6本脚の歩行ロボットと4相の空気圧振動弁を報告した。電子回路や造形後の手作業による組み立ては不要だが、一定圧の空気源は必要となる。


研究の要点は、圧力で切り替わる弁と、脚に空気を送るタイミングを一体化したことにある。4相の出力を対称に生み、左右の脚の位相を調整する。造形直後にガス源を接続すれば歩けるが、圧縮ガスを用意する工程までプリンターだけで完結するわけではない。

デスクトップ3Dプリンターが完全機能ソフトロボットを可能にする方法

チームは市販のデスクトップ型3Dプリンターと単一の柔軟な材料を用いた。材料や形状を調整し、本体、空気圧アクチュエーター、制御用流路を一度の造形にまとめた。研究にはBASFの協力者も参加した。

Source UC San Diego

ソース:UC San Diego

プリンターからすぐに動作する3Dプリント歩行ロボット

歩行は空気圧の変化で弁が順に切り替わり、脚が曲がることで生じる。屋外では小型の圧縮CO₂カートリッジを搭載して、外部配管なしで草地や砂地を歩いた。「電子部品なし」は「エネルギー供給なし」を意味しない。
脚を動かす圧力は本体の弁ネットワークで順番に切り替わり、外部の電子制御器から動作指令を送る必要はない。屋外デモではカートリッジと機械式調圧器を背負い、電源ケーブルや給気チューブを地上設備につながずに歩いた。ただし、ガスが尽きれば歩行は止まる。

ロボットの脚

6本の脚には、互いに反対方向に働く空気圧アクチュエーターが組み込まれている。脚を持ち上げたり前後に動かしたりする圧力の順序を調整し、凹凸のある地面でも体を支えながら進む。
論文の設計では、各脚の空気圧部品が互いに逆方向へ曲がることで前後・上下の動きを生む。6本脚を使うと、片側の脚を持ち上げても残りの脚で姿勢を支えやすい。空気圧の順序を変えながら体を上げ、後方へ押し出し、前脚を次の位置へ運ぶ動作を繰り返す。

ソフトアクチュエータ

本体内部の流体回路が、空気の供給順序を機械的に制御する。気密性を保てる弁や流路を柔らかい材料で一体造形することが、この設計の主要な課題だった。
流路や弁は目に見えない内部構造であり、印刷された柔軟な膜が空気圧で変形する。弁の形状や材料が少し異なるだけで切り替えのしきい値が変わるため、制御に必要な位相を安定させる設計が重要だった。研究はセンサーを含むあらゆる機能の一体造形を実証したわけではない。

空圧振動回路

中核となる振動回路は、一定圧の入力から4相の周期的な圧力信号を作る。電子タイマーを使わずに複数の脚の動きを協調させる仕組みである。
一定の入力圧を受けた回路内で膜が開閉し、4つの出力口に周期的な圧力差を作る。脚の動きをそろえるのにマイクロコントローラーは使っていない。機械的な振動回路が制御を担うため、外から供給するガスの圧力と流量が性能を左右する。

研究チームは、1つの圧力入力から4相の出力を作る、双安定の振動弁を一体造形した。膜と流路の変形が弁の状態を切り替え、脚へ順番に空気を送る。

各弁は圧力がしきい値に達すると空気の流れを次の段階へ切り替える。論文では1周期に6つの内部状態があり、それを4つの駆動相として使う。初期の蒸気機関を着想源の一つとしている。
弁には左右に対応する流路があり、一方の圧力が増えると膜が変形して別の流路を閉じる。圧力が変わると次の状態に移り、6つの状態が周期的に続く。研究者らはそのうち脚の駆動に必要な4相を取り出した。複雑な電子回路を置き換えた一方で、動きの自由度はその機械設計に制約される。

3Dプリントロボットはどれほど耐久性があるのか? テスト結果を公開

研究チームはまず脚の動きを空中で観察し、歩行パターンを調整した。さらに16 gのCO₂カートリッジと20 psiに設定した機械式調圧器を使用したところ、約80秒間動作した。これは電池なしの実証であり、ガスの補充は必要となる。
最初の試験では機体を浮かせ、空気圧を与えて脚の順序を観察した。その結果を用いて地面に接したときの歩幅を調整した。屋外の試験で使用したカートリッジは16 gのCO₂を入れ、調圧器で約138 kPa、すなわち20 psiに保った。カートリッジを含む搭載物は約200 gで、本体重量172 gよりも重い。

寿命テスト

耐久試験では振動弁1個に一定圧をかけ、最初の試験で故障するまで1万9,809回の動作を記録した。これはロボット全体の保証寿命ではない。
これは振動弁単体に圧力をかけた最初の寿命試験の結果であり、すべての試作品が同じ回数で故障するという意味ではない。弁の膜には空気圧、せん断力、繰り返しの曲げが集中する。設計の改良には、膜の材料と形状の耐久性を調べる必要がある。

3Dプリントロボットのテスト結果

研究室と屋外の試験で、ロボットは平面だけでなく草地や砂地なども移動した。水中での歩行も示されたが、どの環境でも実用的な作業ができると証明されたわけではない。
平滑面での速度試験と、草地・砂地・水中での移動デモは別々の条件で行われた。平滑面で測った毎秒約4 cmを、そのまま粗い地面や水中での速度として扱うことはできない。環境に応じてガス供給と脚の接地状態も変わる。

平滑面での試験では21秒で85 cm進み、速度は毎秒約4 cmだった。脚を持ち上げる動きが、粗い地形での移動にも役立った。

一定の空気またはガス供給を受ける条件では、研究チームは最長3日間の連続動作を示した。劣化しやすい部分として、振動弁の4枚の膜を挙げている。カートリッジ1本で3日動いたわけではない。
3日間の連続稼働は、一定圧の空気またはガスを継続して供給した条件での試験である。16 gのCO₂カートリッジ1本で動いた時間は約80秒だった。振動弁の4枚の膜が破損しやすい箇所であることも、この耐久試験から見えてきた。

電子部品なしでソフトロボットを3Dプリントする利点

デスクトップ機で本体、駆動部、制御部を一体造形できるため、造形後の組み立てを削減できる。もっとも、プリンター、材料、圧縮ガス源は別途必要であり、用途に合わせた品質管理も欠かせない。
一体造形では部品の組み合わせや接着が不要になり、同じ設計を複数回試しやすい。しかし造形時間、材料費、失敗した印刷物、ガス供給設備まで含めた総費用は別に評価しなければならない。研究段階の工程を、そのまま量産の生産性と同一視することはできない。

電子部品なしの3Dプリントロボットがゲームチェンジャーである理由

電子回路を使わない方式は、水中、強い磁場、放射線の多い場所など、電子機器の使用が難しい環境で検討できる。一方、センサーや複雑な判断が必要な作業には別の技術が必要になる。
研究論文は、水中、強磁場、放射線、火花発生を避けたい場所を潜在的な用途として挙げている。これらの環境に耐えることを特定用途の安全試験で証明したわけではない。また計測や通信を必要とする任務では電子部品を追加するか、別の方法を採る必要がある。

低コストロボティクス: 3Dプリントがロボットを安くする方法

UC San Diegoの説明では、試作機1台の材料費は約20ドルだった。プリンター、圧縮ガス、調圧器、運用費を含む製品価格ではない。
約20ドルという金額は大学の発表にある試作1台あたりの造形材料費を指す。ロボットが歩くにはCO₂カートリッジ、調圧器、充填・交換作業が必要である。現場で使用する製品なら、耐久性試験や保守も追加の費用となる。

3Dプリントロボット: 実世界での利用と期待時期

教育、環境調査、災害対応などは研究チームが想定する応用例である。ただし今回実証したのは歩行性能であり、監視機器や救助機能を搭載した実用機ではない。原文の「3~5年で実用化」という予測には裏付けがない。
現場で必要な機能には、障害物を検知して進路を変える能力、情報を記録・送信する能力、十分な稼働時間が含まれる。今回のロボットは、そのような機能を一体造形したものではない。災害現場や宇宙での使用は将来の研究目標として読むべきである。

電子部品なし3Dプリントロボットのチームを紹介

研究はUC San DiegoのYichen Zhai、Jiayao Yan、Michael T. Tolleyらと、BASFのAlbert De Boer、Martin Faber、Rohini Guptaらによる。今後はガス源の搭載方法や材料をさらに検討する。
論文の著者にはUC San Diegoの研究者とBASFの共同研究者が含まれる。研究チームは以前にも電子部品を使わないグリッパーを開発した。今後、ガスの貯蔵をより一体化する方法や、環境負荷の小さい材料を探るとしている。

3Dプリントとソフトロボティクスを推進する主要企業

3Dプリントやロボット産業の企業がこの技術に関心を持つ可能性はある。ただし、今回の研究成果から特定の上場企業の売上や株価への影響は導けない。
積層造形の企業は柔らかい材料や小型機の精度向上に取り組んでいる。しかし、大学で製作した歩行ロボットが産業用途に普及するには、信頼性、供給網、規格への対応が必要となる。投資先の選定には個別企業の実績を調べる必要がある。

3D Systems Corporation

3D Systems (DDD )は積層造形機器と関連サービスを提供する企業である。ここで紹介する研究の実施主体ではなく、同社がこの空気圧ロボットを商品化すると発表したわけでもない。

DDD 価格チャート


同社は航空宇宙、自動車、医療、工業などで使われる3Dプリント機器やサービスを扱う。原文にある従業員数や2023年売上高は過去の情報であり、現在の規模を示すものではない。今回の論文は同社製品の評価ではない。

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3D-Printed Robots

一体造形した空気圧回路によって、電子部品を使わない6本脚ロボットの歩行が可能になった。圧縮ガスを必要とし、長時間の現場運用や量産には追加の研究が必要だが、組み立て工程を減らす設計として注目できる。
今回の成果は、柔らかい本体の造形と制御回路の造形を一工程で実現した点にある。歩行距離、カートリッジでの稼働時間、弁の耐久性という実測値を区別して読むと、実証された性能と将来への期待の境界が明確になる。

3Dプリントのその他の研究事例はこちら。

参照文献:

1. Zhai, Y., Yan, J., De Boer, A., Faber, M., Gupta, R., & Tolley, M. T. (2025). Monolithic desktop digital fabrication of autonomous walking robots. Advanced Intelligent Systems. https://doi.org/10.1002/aisy.202400876

David Hamiltonはフルタイムのジャーナリストであり、長年のビットコイン愛好家です。ブロックチェーンに関する記事を書くことを専門としています。彼の記事は、 Bitcoinlightning.comを含む複数のビットコイン出版物に掲載されています。