人工知能
生成AIは企業の群集行動を減少させる可能性がある

AIは生産性向上ツールから資本配分ツールへ
個人投資家の関心は依然としてAIが従業員の生産性に与える影響に集中していますが、機関投資家の調査は、資本配分や市場の再帰性に及ぼす構造的な影響へと目を向け始めています。
生成AIは、これまで人間の労働に依存していたカスタマーサービス、法務相談、翻訳、校正、データ入力、品質保証など多くの業務を自動化し、企業の生産性を高めると期待されています。
生成AIの登場をめぐって投資家や一般の人々が主に注目してきたのは、この変化が雇用市場や競争環境に与える影響です。
しかし、AIの影響はさらに広範囲に及ぶ可能性があります。例えば、優れた成果を上げる人ほど新しい技術を積極的に取り入れ、革新的な用途に活用する傾向があります。知識経済において、AIは能力を何倍にも引き上げる「フォース・マルチプライヤー」とみなされるようになっています。
したがって、生成AIは大企業の最高レベルの意思決定にも大きな影響を及ぼし、経営陣が判断を支援または方向づけるために利用するようになると考えるのが自然です。
中国・北京の首都経済貿易大学の研究者による最近の論文は、この見方を裏づけています。生成AIが経営陣の意思決定の独立性を高め、企業の群集行動を抑える可能性があると論じています。
この論文はInternational Review of Economics & Finance1に掲載され、題名は「盲目的な模倣か、合理的な意思決定か――生成AIが企業の投資における群集行動に与える影響」です。
企業投資における群集行動の意味
企業が集団として行動し、一定期間に各社が同業他社と非常によく似た判断を下すことは、広く研究されている現象です。特に企業の投資判断で強く表れます。競合他社に重要技術を独占させない、変化する市場環境で消極的に見られるリスクを避ける、イノベーションに対応するといった複数の理由から、競合を模倣する傾向が生じます。
この傾向を生む重要な要因の一つは、異なる企業の意思決定が共通の情報に左右されることです。
「企業が非常によく似た情報源に依存したり、公に発信されたシグナルを重視したりすると、個々には合理的な判断であっても、全体として構造的なゆがみを生む可能性がある。」
しかし、企業の群集行動は大きな失敗にもつながり得ます。有望なアイデアでも過度に追求すれば壊滅的なバブルになり、新技術が期待ほど有用でないことや、新しい経営手法が予想外の問題を引き起こすこともあります。
群集行動を完全に避けるのは難しいとしても、総じて望ましいものではありません。したがって、それを抑える要因は企業と経済全体に利益をもたらす可能性があります。
研究の発見
この研究は中国企業をデータサンプルとし、企業主体による投資判断に焦点を当てました。
研究では、企業レベルで見ると、生成AIの導入が投資における群集行動に影響を与える証拠が確認されました。
生成AIは企業の投資判断における群集行動を減らすだけでなく、意思決定全般の独立性も高めます。
これは、生成AIの導入が従業員や部門レベルの生産性向上にとどまらず、企業戦略全体に広範な影響を及ぼし得ることを示しています。
さらに、企業の所有形態と業種も影響することが分かりました。効果は非国有企業とハイテク産業で強く、非ハイテク産業と国有企業では弱くなりました。
生成AIが盲目的模倣を減少させる可能性がある理由
AIの導入は、企業経営のプロセスと経営者の役割を根本から変える可能性があると以前から予想されていました。
「人工知能はモデル主導およびアルゴリズム支援の意思決定を重視するため、その利用によって、個人の経験や判断ではなく体系的な分析に基づく方向へ意思決定が移り、意思決定プロセスにおける経営者の役割が再定義される可能性がある。」
この研究を理解するうえで重要なのは、投資判断が通常、不完全な情報しかない環境で行われるという背景です。
企業はプロジェクトのキャッシュフロー見通しだけでなく、市場需要の変化、競合他社の行動、顧客の選好、マクロ経済環境も予測しなければなりません。こうしたデータの多くは不完全であったり、互いに矛盾していたりします。
さらに状況を複雑にするのは、情報を取得して処理する能力が企業によって大きく異なることです。
この複雑さこそが、現実の最終的な意思決定プロセスで同業他社の観察が大きな役割を果たす理由だと考えられています。
「同業他社の投資行動は、観察可能で要約された外部シグナルとなる。他社が投資するか、どれだけ投資するか、いつ投資するかを観察することで、企業は市場全体の期待をある程度推測し、自社の意思決定を取り巻く不確実性を減らせる。」
金融市場では、この群集行動は「再帰性」と呼ばれてきました。模倣と共通認識によって自己強化されるフィードバックループであり、金融バブルが生まれる主な要因の一つになり得ます。
生成AIの導入は、企業の情報処理方法を変えることで、より独自性の高い判断を促します。判断の基礎となる情報が豊富になるため、以前よりも多様な意思決定が行われるようになります。
「アルゴリズム主導の分析によって情報を継続的に更新できるため、企業は早い段階で比較的明確な評価を形成し、他社の行動を待って学ぼうとする動機を弱められる。」
AIが新たな形態の群集行動を生む可能性がある理由
つまりAIは、より独自性が高く実行可能なデータを提供することで、同業他社、競合企業、業界動向の模倣への依存を減らせると考えられます。
ただし、この効果を過大評価すべきではありません。AI導入と投資判断の違いは、各企業に固有の表面化していない特性と相関している可能性があります。例えば、洞察力のある経営陣を持つ革新的な企業は、独自の投資判断を下すと同時にAI導入でも先行する可能性が高いでしょう。
「企業の経営品質、技術革新能力、市場での位置づけといった要因は、生成AIの導入と投資行動の両方に影響し得る。これらの要因をモデルに含めなければ、生成AIの効果を過大評価または過小評価する結果になりかねない。」
また、この結論は中国企業のみの観察から導かれており、文化やビジネス環境が異なれば結果も変わる可能性がある点に注意が必要です。
この研究結果は、AI導入が新たな形の群集行動を生み得ないという意味でもありません。
例えば、企業が似たAIモデルを利用すれば、同じような結論に達する可能性があります。
もう一つの問題は、AIのデータが真空の中で生み出されるわけではないことです。業界全体のデータが特定の傾向を示せば、異なるAIモデルであってもそれぞれ独立に同じ傾向を捉え、企業の経営陣に同じ結論を提示する可能性があります。つまりAI自体も、人間の経営者と同じように群集行動の影響を受けるかもしれません。
投資家への意味合い
AIが投資における群集行動を崩したり変えたりする可能性があるという発見から、投資家はいくつかの示唆を得られます。
第一に、単純作業だけでなく情報分析や経営判断にもAIを早期導入することが、決定的な優位性になり得ます。投資家は、そのような企業を優先的に検討するとよいでしょう。
また、モメンタムや群集行動に依存する投資戦略には大きな打撃となる可能性があります。AIによって各社の判断が独自性を増せば、業界全体の好況に一斉に資金が流入したり、特定の技術や投資テーマが突然「次の注目トレンド」になったりする場面は減るかもしれません。
結論: より良い意思決定はより良いガバナンスに依存する
投資判断を支援するAIの導入は、群集行動を減らしているようです。この効果は特に民間所有のテクノロジー企業で顕著でしたが、その理由を明らかにするにはさらなる調査が必要です。
一方で、AIの早期導入は、独自の投資判断を直接生み出す原因というより、優れた柔軟なガバナンスの表れにすぎない可能性もあります。
当然ながら、優れたガバナンスは、戦略的な動き、投資判断、AIデータを独自の選択に賢く活用することなど、より良い意思決定につながります。
これは株式投資家にとって、企業のファンダメンタルズを調べることが財務、市場シェア、イノベーションの分析だけではない点を浮き彫りにします。ガバナンスと経営陣の意思決定の質をしっかり評価することも含まれます。
したがって、独自性のある投資によって示される真に独立した思考は、AI活用への積極性から生まれる場合でも、人間だけの独立した評価から生まれる場合でも、非常に重要な判断基準です。
参考文献
1. Yongxiang Wang, Zhanhong Wu, Jun Zhang. Blind imitation or rational decision-making? The impact of generative artificial intelligence on corporate investment herd behavior. International Review of Economics & Finance. 2026年3月19日. 10.1016/j.iref.2026.105139.










