積層造形
レーザー書き込みの突破口 – 比類なき速度と精度の実現

中国の研究チームが、二つの光を使って微細な構造を作る直接レーザー描画法を報告した。Optics Lettersの論文では、毎秒100マイクロメートルで描画した際に横方向で約100ナノメートルの分解能が得られた。光学部品などの精密構造に応用できる可能性があるが、特定の市販製品にすでに採用されたことを示すものではない。
直接レーザー描画とは
直接レーザー描画(DLW)は、光を狙った位置に集中させ、感光性材料を硬化させたり構造を形成したりする製造方法だ。複数の光子を利用する方式では、小さな二次元・三次元構造を作れる。分解能を高めるには、目的の場所に十分な光を当てつつ、周囲が余計に硬化するのを防ぐ必要がある。
従来の課題
強いレーザー光は、狙った位置の周辺にも作用することがある。そのため、非常に近い線を別々に形成するのが難しい。今回の研究では、周辺での重合を抑える光を追加してこの問題を軽減しようとした。
研究の内容
論文「Super-resolution direct laser writing via multiphoton and peripheral photoinhibition photolithography」1は、多光子による描画と、周辺の光阻害を使う描画を扱っている。研究者たちは二つの光と特別な感光材料を組み合わせ、細い線や三次元構造を試作した。
二つの光の働き
一方の光は材料の重合を始め、もう一方はその周辺で重合が起きるのを抑える。これによって描画する線の境界をより精密に決められる。実験では光の位置合わせと強度などを調整した。
光学装置の構成
励起光には波長525ナノメートルのフェムト秒レーザー、抑制光には532ナノメートルのピコ秒レーザーを用いた。二つの光路の違いによって約2700ピコ秒の遅延が生じる。研究者たちは空間光変調器(SLM)とゼルニケ多項式で波面収差を補正し、光の位置合わせ、出力変動、装置のずれにも注意を払った。
感光材料
試験にはPETAという単量体とBTPOSを含む感光材料が使われた。BTPOSは、周辺で不要な架橋反応が生じるのを減らすラジカル捕捉剤として説明されている。特定の材料と装置で得られた結果が、あらゆる材料にそのまま当てはまるわけではない。
試験した構造
研究者たちは、間隔の狭い線と、棒を層状に交差させた「ウッドパイル」構造を作った。棒の横方向の間隔は300ナノメートルから225ナノメートルまでだった。このような試験で、小さな形状をどの程度分けて描画できるか調べられる。

出典:Optica
測定結果
論文の要旨によれば、毎秒100マイクロメートルの描画速度で横方向の分解能約100ナノメートルを達成した。速度を毎秒1000マイクロメートルに上げても、約120ナノメートルの分解能が得られた。三次元の試験構造では、軸方向の最小周期は318.15ナノメートルで、論文に示された対応する回折限界の320ナノメートルをわずかに下回った。これは実験装置での結果であり、量産の速度や費用を証明したものではない。
考えられる用途
微細構造を速く精密に作れるようになれば、マイクロレンズ、フォトニック結晶、光学装置、メタマテリアルの研究に役立つ可能性がある。研究者は仮想現実や拡張現実の表示装置に使う光導波路も応用例として挙げている。実際の製品には、繰り返し製造した際の品質、材料の安定性、費用を別に確かめる必要がある。
データ保存
微細加工は将来の保存装置の部品研究と関連するかもしれない。ただし、この論文は市販ハードディスクの容量向上や特定の保存装置の製造方法を実証していない。
VR・ARと光学部品
精密な微細構造は、VR・AR用の光学部品の設計に役立ち得る。この試作品が直ちに一般向け機器の性能向上や値下げにつながるとは言えない。
研究者たち
論文の著者はXi Liu、Qiulan Liu、Mengdi Luo、Liang Xu、Cuifang Kuang、Xu Liuである。所属先には中国の浙江大学やZhejiang Labなどが含まれる。
関連企業
以下の企業はデータ保存業界の一例として紹介する。今回の研究に参加した、またはこの描画法を製品に採用したという意味ではない。
Seagate Technology Holdings
Seagate Technology Holdings (STX )はデータ保存装置と関連サービスを提供する。この論文だけを根拠に、同社の製品開発計画、業績や株価の上昇を予測することはできない。
STX 価格チャート
Seagate Technology Holdingsの最新情報
研究が示したこと
二つの光と感光材料を組み合わせることで、細い線や三次元構造を精密に描画できることが示された。光学部品の製造研究にとって有望な成果だが、商用化の時期や実製品での性能は今後の検証を要する。ほかのナノ技術の記事はこちらで読める。
参考文献
1. Liu, X., Liu, Q., Luo, M., Xu, L., Kuang, C. & Liu, X. (2025). 「Super-resolution direct laser writing via multiphoton and peripheral photoinhibition photolithography」. Optics Letters 50(5), 1675–1678. https://doi.org/10.1364/OL.552034.












